Guides と Sensors の十字分類
ハーネスの要素は数が多く、そのまま並べると把握しきれません。そこで、2 つの軸で四分類すると、それぞれの役割と弱点が見通せるようになります。この章の枠組みは、次章以降で「いま発火したのはどの種類か」を判断する物差しになります。
2 つの軸
1 つ目の軸はタイミングです。
- Guide(ガイド) — 行動の前に方向づける(feedforward)。「こう進めてね」と先回りで誘導する
- Sensor(センサー) — 行動の後に検知する(feedback)。「いまのは違うよ」と事後に気づかせて直させる
2 つ目の軸は仕組みです。
- Computational(決定的) — スクリプトや設定で確実に動く。条件に当たれば必ず発火する
- Inferential(推論的) — LLM の読解に頼る。効くことが多いが、確率的に外す
この 2 軸を掛け合わせると、4 つのマスができます。
四分類のマトリクス
それぞれに、この環境の実例を当てはめます。
| 分類 | いつ・どう効くか | ~/.claude での実例 |
|---|---|---|
| Computational Guide (決定的・行動前) | 危険な操作を物理的に止める | check-protected-files.sh(🔧。.env への書き込みを事前にブロック)、settings.json の権限設定(📦 の機構に 🔧 の設定値)、型チェック・lint 設定 |
| Inferential Guide (推論的・行動前) | 文章で方針を示し、モデルに従わせる | CLAUDE.md、rules/*.md、skills/*/SKILL.md(いずれも 🔧) |
| Computational Sensor (決定的・行動後) | 出力を機械的に検査して差し戻す | Stop hook(check-plain-question.sh など 🔧)、check-suppression.sh(🔧)、CI |
| Inferential Sensor (推論的・行動後) | LLM が出力を読み直して評価する | /review skill、code-reviewer subagent(いずれも 🔧) |
なぜ片方だけでは足りないのか
ハーネスの信頼性を左右するのは、この一点です。Inferential なものは確率的に外すため、それだけに頼ると「だいたい守るが、たまに破る」状態から抜け出せません。
具体例で見てみます。この環境には「ユーザーへの質問は平文ではなく専用ツールで構造化する」という規範があります。これは rules/ask-user-question.md という Inferential Guide で書かれています。
rules/ask-user-question.md(行動前のガイド)
→ 「平文で質問しないで、専用ツールを使ってね」と指示
→ たいてい守る。でも、ふとした拍子に「どうしますか?」と平文で書いてしまう
→ ガイドは行動前の誘導なので、書いてしまった後は気づけない
そこで、同じ規範を Computational Sensor でも裏打ちします。この Sensor も机上の設計ではなく、平文質問の再発という実際の失敗から生まれました。
check-plain-question.sh(Stop hook = 行動後のセンサー)
→ 確定した応答の本文全体を機械的に grep して平文質問パターンを検出
→ 見つかったら exit 2 で差し戻し、専用ツールで質問し直させる
→ 「確率的にすり抜けた 1 回」を決定的に捕まえる
ガイドが「先回りの誘導」、センサーが「取りこぼしの捕獲」です。この Guide と Sensor のペアこそが、確率的なモデルを信頼できるエージェントへ変える肝です。後の章では、このペアを /grill-me の例でもう一度詳しく見ます。
規範を rules/ に書くのは Inferential Guide を 1 つ置いただけです。本当に守らせたい規範ほど、Computational Sensor(hook)で取りこぼしを捕まえる対を用意します。「書いた=守られる」と考えないのが、このハーネスの設計姿勢です。
この物差しの使い方
/debug の流れを追うとき、発火した要素ごとに「これは 4 分類のどれか」を意識すると、役割が立体的に見えてきます。
- MCP のロード指示や rule の読み込みは → Inferential Guide
.envブロックは → Computational Guide、suppression コメント検出は → Computational Sensor- 応答末尾の自己修正は → Computational Sensor
/reviewによる事後レビューは → Inferential Sensor
要点は次のとおりです。
- ハーネスの要素は「行動前/後」×「決定的/推論的」で四分類できる
- Inferential(rules / skills)は確率的に外すため、それだけでは不十分
- 重要な規範ほど Guide と Sensor をペアにして、取りこぼしを決定的に捕まえる
次は ~/.claude の構成要素マップ で、この環境に実際に何が置かれているかを一覧します。